将棋の話題 第3局
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第36期棋王戦 五番勝負 第4局 渡辺明竜王の大錯覚

 2011年3月18日、第36期棋王戦 五番勝負 第4局、久保利明棋王 対 渡辺明竜王の対戦は渡辺竜王の大錯覚で幕を下ろした。下図は毎度お馴染みマイボナでの棋譜解析のグラフである。100手目あたりまで先手の渡辺竜王が優勢であったのが、ここから急転直下劣勢に陥った様子が鮮明に表れている。

kio.jpg

 101手目をGPS将棋で検討してみると最善手は▲6三竜で評価値は+2126(検討する毎に値は異なる)とはじき出された。

[2126]  ▲6三龍(52)△8一桂打▲6四角成(82)△7六銀(87)▲7五馬(64)△同玉(84)▲6六金打△同角(44)▲同龍(63)△8四玉(75)▲6四龍(66)△7四歩打▲6六角打△9四玉(84)▲9六歩(97)△9九飛成(89)

kio100.jpg
100手目△8四玉まで

 つまり上図の局面で101手目▲6三竜ならほぼ必勝形であると判断されたが、渡辺竜王が実戦で指した手は▲7二竜。

kio101.jpg
101手目▲7二竜まで

 ここで再びGPS将棋で検討してみると102手目△7四金で後手の評価値が+626(検討する毎に値は異なる)、つまり今度は後手の方が一転優勢に変わってしまったのである。このあたりはGPS将棋の形勢判断と解説者の解説と見事に一致している。

[626]  △7四金(75)▲7五歩打△同玉(84)▲7三角成(82)△7六玉(75)▲6六歩(67)△8八銀成(87)▲6七金(58)△8七玉(76)▲7四馬(73)△7九飛成(89)▲5八玉(69)△9九龍(79)▲6四馬(74)△5五香打

 渡辺竜王の頭の中でどんな計算がされていたのか頭の中を覗く事はできないが、恐らく大きな油断があったのではないだろうか。将棋指しの間で「温泉気分」という表現がしばしば使われる。優勢になった時人は温泉にでも浸かっているような甘美な世界に酔いしれてしまう物である。そこに油断が生じ錯覚が起きる。超一流の棋士の対局、しかも持ち時間が比較的長い対局で、このような一発逆転の大悪手はなかなかお目に掛かる事はないであろう。

2011年3月18日(金)
第36期棋王戦五番勝負第4局
久保利明棋王-渡辺 明竜王
http://live.shogi.or.jp/kiou/kifu/kiou110318.html
2011/03/19
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