将棋の話題 第七局
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小池重明の実力はどんな物であったのか?


 小池 重明(こいけ じゅうめい、本名・こいけ しげあき、1947年12月24日 - 1992年5月1日)は、愛知県名古屋市出身のアマチュアの将棋指し。アマ最強と謳われ、賭け将棋で生計を立てる真剣師としても伝説的な強さを誇った。「新宿の殺し屋」「プロ殺し」「最後の真剣師」など数多くの異名で知られる。

ウィキペディアより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%B1%A0%E9%87%8D%E6%98%8E

 兎に角本能の赴くままのはちゃめちゃな人生であった。1982年その一介のアマチュア棋士がタイトル獲得を目前にした森雞二八段(当時)と平手で対局し勝利した一局を検討してみた。

昭和57年6月11日 プロ・アマ指し込み三番勝負第3局 千駄ヶ谷 将棋会館
https://shogidb2.com/games/a76ebf8a534a313d2599220acea4425ea027e3da

 下図はマイボナで棋譜解析をした結果のグラフであるが、序盤は互角の戦いが続き中盤は後手の森雞二八段(当時)が少し優位に局面を進めた様子が窺える。終盤で大きくグラフが上下に揺れた後、先手の小池が一気に勝勢になり勝利を収めたという印象だがこのあたりでいったい何が起きていたのであろう。

koike.jpg

 上のグラフを見ると130手目あたりは小池が優勢であったかのような判断である。 下図は132手目△5三同金までの局面だが、ここでのGPS将棋の形勢判断は小池が▲5三とと指せば圧倒的優位だとはじき出している。

[1272]  ▲5三と(63)△同桂(41)▲5五香打△6三金打▲5三香成(55)△同金(63)▲5五桂打△5四玉(43)▲5三桂成(65)△6四玉(54)▲7七金打△3七銀打▲同玉(28)△7七馬(76)
koike02.jpg
132手目△5三同金まで

 ここで小池が実際に指した手は▲5三桂成。この一手で流れが大きく変わったようだ。小池の▲5三桂成に森が△同桂と応じた局面(下図)は果たしてどういう形勢なのであろう。

koike03.jpg
134手目△5三同桂まで

[-409]  ▲5三と(63)△同玉(43)▲6五桂打△6三玉(53)▲7七金打△同馬(76)▲6四歩打△同玉(63)▲7五金打△6三玉(64)▲6四歩打△6二玉(63)

 どうやら小池の133手目▲5三桂成は大悪手であったようだ。この一着で一気に小池の勝勢(評価値+1272)から劣勢(評価値-409)に大逆転しまったと思われる。

 しかし真剣勝負で馴らした小池、すぐに自分の敗着に気付いた事だろう。上図の局面での最善手は▲5三とのようだが、そんな普通の手を指していたのでは普通に負けてしまうと本能的に嗅ぎ取ったに違いない。そこで起死回生を図る妖しげな一着を放つ。その一着とは・・・・・・・・・・

koike04.jpg
135手目▲5八歩まで

 小池は▲5八歩と妖しげな歩を打ち下ろした。森は▲5三との筋ばかりを読んでいたに違いない。わけのわからない歩を得体の知れないアマチュアに打たれてプロとしてカチンと来たのであろう。挑発に乗ってこの歩を取ってしまった。ここでは△6六馬と銀を取っておけば森の圧倒的優勢だったのである。

[1522]  △6六馬(76)▲7八歩打△1六歩打▲同銀(27)△5四銀打▲6四金打△6三銀(54)▲同金(64)△7八龍(88)▲3二銀打△5四玉(43)▲6四金打

 冷静さを欠いた森はその後も緩手を放ちついに再逆転する。こうなると小池のペースである。少し寄せをもたつく物の見事にタイトル獲得目前のプロを打ち破ってしまった。荒削りな所はあるが、この一局を見るだけでもプロの棋士として十分通用する実力を備えていた物と思って差し支えないであろう。

2011/03/29
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