将棋の話題 第十四局
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大和証券杯最強戦 1回戦第3局、羽生善治名人対菅井竜也四段戦

https://shogidb2.com/games/515706b97ef7dc7a1647e77676014d393f234ad1

 今回は大和証券杯最強戦 1回戦第3局、羽生善治名人対菅井竜也四段戦を取り上げた。菅井竜也四段は1992年4月17日生まれ、岡山県岡山市出身。井上慶太九段門下。2010年四段。菅井四段は四・五段部門4位の成績を挙げ、本棋戦出場を果たす。

 下記はマイボナでの解析結果のグラフである。後手菅井竜也四段の完勝譜である。持ち時間は各30分、それを使い切ると一手30秒未満という早指し戦で、早指しの得意な羽生名人を相手に見事に勝ちを収めた。

110515_01.jpg

 下図は28手目△5五同角までの局面であるが、当ホームページ6章「ソフトを使って観戦してみよう」で取り上げた対局にも同じ局面が表れたように、ここまでの局面は前例が多くほぼ定跡化されている。この局面をGPS将棋に検討させてみるとどうやら先手の方が少し悪いとの形勢判断であるのだが本当のところは一体どうなのであろうか。

[-695]  ▲1八飛(28)△2七銀打▲5八飛(18)△1九角成(55)▲6八銀(77)△5一香打▲同飛成(58)△同金(61)▲1一角成(88)△3三桂(21)▲3五歩(36)△同歩(34)▲5八金(49)△5五馬(19)

 過去の対戦をマイボナを使って棋譜検索(2010/11/18版)すると▲2七飛打が2例、▲1八飛打が1例、▲3八飛打が1例、▲5八飛打が1例、▲1八飛と寄る手が1例見つかる。先手の羽生名人はここで▲1八飛打を採用した。

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28手目△5五同角まで

 下図は30手目△5六歩までの局面である。ここは前例にもあるように普通は▲6六銀と銀を上がる手なのだが羽生名人は▲2四歩と指し先例と別れを告げた。研究の一手だったのであろうか?

[-487]  ▲6六銀(77)△2八角成(55)▲同飛(18)△4二銀(31)▲7九角(88)△3三桂(21)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(79)△2六歩打▲同飛(28)△4四歩(43)▲6八角(24)△2五歩打

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30手目▲5六歩まで

 今回の対局では後手の菅井四段の指し手とソフトの候補手が良く一致していた。マイボナの棋譜解析では菅井竜也四段とBonanza6.0との指し手一致率が第1候補手と第2候補手を合わせると87.8%にまで達した。つまり後手の指し手10手のうち9手までもが、Bonanza6.0の考えた最善手と次善手の中から指されていた事になる。一般のアマチュアでは思いもつかないようなプロの指し手をソフトが予想し、次から次へと当てて行くような不思議な感覚であった。
一致率(○,○+△)
先手:(23,31)/41=(56.1,75.6)%
後手:(27,36)/41= (65.9,87.8)%
 下図は羽生名人の51手目▲5八歩までの局面であるが、羽生名人のこの一着で形勢が少し傾いたようである。GPS将棋の51手目の候補手は▲4一角であった。

[-217]  ▲4一角打△3一銀(42)▲5三歩打△5一飛打▲5二歩成(53)△同金(61)▲3二角成(41)△同銀(31)▲3六飛(26)△2七角打▲5六飛(36)△4九角成(27)

 この緩手を菅井四段は見逃さなかった。次の一手で後手が少し指し易くなったようである。

110515_04.jpg
51手目▲5八歩まで

 上図の局面から菅井四段が放った手は△3五銀。この一着で後手の評価値が+827と上がった。

[827]  △3五銀打▲2七飛(26)△2四歩(23)▲9七角(88)△9五歩(94)▲同歩(96)△同香(91)▲4二角成(97)△同金(32)▲9一銀打△同玉(82)▲9五香(99)

 下図は79手目▲6二金までの局面である。ここで後手の菅井四段に決め手があったようだがどうだったのか。

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79手目▲6二金まで

 後手の菅井四段は上図の局面から△1二角と指したが、GPS将棋の候補手はズバリ△6九飛成と飛車を切る手であった。飛車を切れば評価値が一気に跳ね上がったのだが。

[1893]  △6九飛成(39)▲同玉(78)△8八金打▲7二金(62)△同金(61)▲7九銀打△7八銀打▲同銀(79)△4八金打▲5九銀(68)△7九角打▲7一銀打△9二玉(82)▲8二飛打△同金(72)▲同銀成(71)

 決め手は逃したようだが菅井四段の優勢には変わりがなかった。下図はもう少し進んで羽生名人が93手目▲6一銀と打った局面。この局面は先手玉に詰みがあるのだが菅井四段はそれを逃さなかった。

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93手目▲6一銀まで

 △7九と▲同銀△7七銀と銀を打ちこまれるのを見て羽生名人投了。鮮やかな寄せであった。ちなみに上図の局面から将棋所(エンジンはGPS将棋)を使って詰ます事ができる。「対局」メニューから「詰将棋解答...」を選ぶかツールバーにある「詰」ボタンを押す。

GPS将棋による詰み手順
△6八と ▲同 金 △7九金 ▲7七玉 △8八銀 ▲同 玉 △8九金 ▲9八玉
△9九金 ▲8八玉 △8九飛成 ▲7七玉 △8五桂 ▲8六玉 △9七銀 ▲7五玉
△7四馬

 羽生名人を相手に怯む事のない堂々とした菅井四段の完勝譜であった。
2011/05/29
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