将棋の話題 第十三局
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第69期名人戦七番勝負第4局 

https://shogidb2.com/games/927138a832afef0a44ef96b3dbea1d9b0a0482fa

 青森県弘前市の藤田記念庭園で5月17日から行われた第69期名人戦七番勝負第4局は、18日午後9時8分、133手で羽生善治名人が挑戦者の森内俊之九段に勝ち、今期名人戦初白星を挙げて1勝3敗とした。

 下記はマイボナでの解析結果のグラフであるが、90手目あたりまでは先手の羽生名人が若干不利だという形勢判断である。ところがびっくり、プロ棋士の間では先手の羽生名人が有利だという形勢判断であったのだ。18日夕方4時からのNHKBSプレミアム放送開始直後、後手の森内九段が90手目を指した後の局面が映し出された。この局面で広瀬章人王位と行方尚史八段の解説があったが、ここでは先手良しという形勢判断がなされていた。また森内九段の局後の感想でも「経験がある形だが、判断が難しかった。駒の働きが悪くなり、少しつらくなったが、今日になってからはあまりチャンスがなかったですね」という事なのでほぼ羽生名人が主導する形で対局が進められていた様子である。

110517_01.jpg

 この将棋はマイボナで棋譜検索をしていただくとおわかりのように、2007年9月13日の15回銀河戦決勝トーナメント決勝、渡辺 明 対 森内俊之の対局と71手目▲6六飛までは全く同じ展開(途中手順は異なる)となった。

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71手目▲6六飛まで

 どこで先例から離れるのかが注目されていたが、72手目後手の森内九段は前回△1四香と歩を掃ったのに対し、今回△8四角と角を飛車に当てた。上図の局面でGPS将棋の候補手も△8四角で後手の評価値+551と弾き出した。

[551]  △8四角(73)▲1五香(18)△6六角(84)▲1三歩成(14)△同香(11)▲同香成(15)△同玉(22)▲6六銀(77)△2九飛打▲7七金(67)△9五歩(94)▲4一角打△3一銀(42)▲1五香打

 そして放送開始直後映し出された森内九段90手目までの局面。GPS将棋に検討させてもボナンザと同じく先手若干不利という形勢判断がなされた。

[-606]  ▲3七歩打△2四金(23)▲同角(79)△3五銀(26)▲1七香(18)△5七成桂(47)▲同金(67)△2四銀(35)▲同歩(25)△5七馬(48)▲1三歩成(14)△4一玉(32)▲2三歩成(24)△6七銀打

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90手目△3二玉まで

 森内九段を始めプロの解説者が言うのだから間違いはないであろう。強いソフトの形勢判断にも係わらず上図の局面は少し先手が良いみたいだ。ただ少し気になるのは下図95手目▲6四歩までの局面である。

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95手目▲6四歩まで

 上図の局面をGPS将棋に検討させると△6四同歩と取って少し後手が良いという判断だ。

[440]  △6四歩(63)▲1三成銀(24)△2二歩打▲7四歩打△7五桂打▲7三歩成(74)△同桂(81)▲4九歩打△6七桂成(75)▲4八歩(49)△7八成桂(67)▲7三飛成(76)△7九成桂(78)▲2四桂打

 ところが実戦で森内九段は△5四金と歩を掃った。96手目△5四金までの局面をGPS将棋に検討させると今度は先手良しと逆転した事を示唆する。もし96手目△6四同歩と続いていたら解説通り後手が劣勢になって行ったのであろうか?永世名人同士の対局にタイトル保持者の解説。優秀なソフトの読みにも大きな穴があいているようだ。
2011/05/21
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